いただいたコメントへの回答がちょっと長くなり、データ転送の話になってしまいましたが、受信機にワイヤレスで届いたところまで話がすすみましたので、いよいよDACの話へと進みます。10月11日の記事に関してもMTさんからコメントをいただいていますが、Jitter(bit clockやサンプリングクロックのゆらぎ、ズレ)に関して、USB Audioやワイヤレスでは実際にどうなっているのかということについて、私たちが実際に測定した波形データなどを元に稿を改めて回答方々説明したいと考えていますので、ご期待ください。
REX-Link1ではDACとしてCirrus Logic(Crystal)の製品を使用しましたが、REX-Link2では旭化成エレクトロニクスのAK4353を、ヘッドホンのREX-WHP2ではWolfsonのWM8751Lを採用しました。
オーディオマニアというより評論家の間ではDACのブランド、モデルについていろんな評判が流れています。
Burr-Brown(TI)製がいいとか、Wolfson製がいいとか、はたまたCirrus Logic製がいいとかいうような評判が流布しています。DACも音をつくる素材のひとつですのでブランドや品種、何を使っているかということが、「音を推測するキーワード」になるようです。これは、ちょうど「関さば」というようなブランドと同じのようなものと私たちは考えています。「関さば」を使って「さばの味噌煮」を作っても、味付けや調理が下手だったら、名人が「ノルウェー産冷凍さば」を使って作った味噌煮より美味しくないかもしれません。
したがって、私たちはDACに何を使うかより、まず私たちが使いこなす能力を身に付けることが必要だと考えています。Burr-BrownのDACとは創業以来24年間、付き合っていますが、計測制御用のDACばかりと付き合ってきましたのでノイズ対策などの能力はありますが、Audio用の場合はそれに加えて「いい音かどうか聴き分ける」能力が必要になります。これに関しては、修行を積むしかありません。いろんなDACを実験している修行の途中結果は、パソコンを使ってDAC内部のいろんなレジスタを設定しながら「音づくり」を皆さんに楽しんでいただけるDACキットとして近日中に提供を開始する予定ですのでご期待くささい。
REX-Link2EXでもREX-Link2と同じDAC(旭化成エレクトロニクスのAK4353)を採用しました。AK4353を採用したのは、DACとしての基本性能が24bit/96KHz対応というだけでなく、デジタルボリュームやアナログフィルタなどを内蔵していること、それにS/PDIF出力用のDITも内蔵していることなどが理由です。
もちろんヒアリングテストでも他のDACに比べて劣るということがなかったことも理由の一つです。
REX-Link2からREX-Link2EXへの改良点はDACの電源フィルタの改善と、出力のカップリングコンデンサをオーディオ用表面実装品から、よりグレードの高いリード線タイプに変更したことくらいです。
REX-Link2ではカーナビなどのCDチェンジャ入力に接続することも考えていましたので、ぎりぎりまで出力レベルを上げるため、DACの電源として5Vを使用しました。そのため、電源のフィルタが簡単なものにせざるを得ず、実質的にはデカップリングとフェライトビーズ(チョークコイル)のみで構成しています。その結果、「ラジオ技術」8月号(2007年)の記事中の実測データでも示されているように、1kHzの両側、特に周波数の高い側に-90dB程度の低レベルですが余計なスペクトルが出ています。最初はスイッチング電源からの漏洩ノイズが混入しているものと考えて、電源として乾電池(1.5Vx4で6V)、ニッケル水素電池(1.2Vx4で4.8V)でも実験しましたが結果は同じでした。DACのアナログ電源には簡単なフィルタを入れてありましたが、GNDパターンも含めて、どこかからまわりこんでいるようです。
REX-Link2EXでは、最初からオーディオアンプ(プリアンプ)のAUX入力(入力レベル:100?150mV/10kΩ)に接続することを考えていました。そのため、出力レベルが低くなってもかまいませんので、電源電圧を3V前後に落として、電源フィルタを強化することにしました。その結果、余計なスペクトルは消えました。その測定結果を添付しておきますのでご参照ください。
ただし、この余計なスペクトルがなくなって、データがよくなったということが即、音がよくなったとは限らないのがAudioの面白いところです。REX-Link2とREX-Link2EXの場合も、これだけで音がよくなった訳ではありませんが、よくなった理由のひとつにはなったのではないかと思っています。