ワイヤレスヘッドホンをつくる その10 REX-WHP1からWHP2へのみちのり 後編

 私達もベンチャービジネスのはしくれですので、モットーは「日々是創業、日々是実験」です。ということでREX-WHP1の発売後、すぐにREX-WHP2の開発にとりかかりました。まず、今度は「おっ、おっ、大きい」と驚かれないようにヘッドホン自体を小型にしなければなりません。しかし、このBlogの最初の方で述べましたように、安物のヘッドホンユニットを採用するわけにはゆきません。そこで、いろいろと考えた結果、外出時の携帯用ヘッドホンとしては、当時、発売されたBOSEのノイズキャンセリングヘッドホン程度の大きさが妥当ということに落ち着きました。当然、同じくらいの大きさの有線ヘッドホンの中高級品に相当する音質や装着感必須です。ということで、ヘッドホンユニットは30mmΦのドライバを採用することにしました。REX-WHP1は53mmΦという大型のドライバで低音もゆったりと出ましたが、30mmΦになるとどうかなと気になりましたが、REX-WHP1と同じ国産の有名メーカのものを提供してもらうことになりましたので、低音も高音もたっぷりと出ました。音質面での問題はこれでクリアされました。
 電池も何とかREX-WHP1と同じ容量(1,150mAh)のLi-ion電池をハウジングに収納できました。ワイヤレス部は最初はREX-WHP1と同じ方式、Chipセットで試作を行い、DACやアンプ部はREX-WHP1より、はるかにパワーのある国産LSI(4W+4Wの出力があり、小型のアクティブスピーカ用として充分使用できるようなものです)を使用しました。このアンプはD級のデジタルアンプで消費電力が少なく、しかも効率がよく、そのうえ直流カット用の電解コンデンサなしでスピーカー(ヘッドホンのドライバユニット)を駆動することができるタイプです。REX-WHP2の場合は30mmΦのドライバユニットを採用したため、ハウジングが小さく、音質に影響する大型・大容量の直流カット用の電解コンデンサ(オーディオ用の特別なものです)を2個(L,R用)も基板上に実装して収容できなかったため、このLSIを採用しました。また、効率をあげて消費電力を減らして電池を長持ちさせるためD級のパワーアンプを採用した結果、電池15時間以上持つようになりました。

 REX-WHP1発売の1年後(2005年秋)にはREX-WHP2の量産サンプルも出来上がり、強度試験なども行いました。音質は強力なパワーアンプを搭載したこともあってREX-WHP1に比べて、はるかにパワフルな音で、なかなかのものが出来上がりました。しかも、今度は携帯に便利なように、持ち運び時に左右のハウジングを90度ずつ回転させて、ポーチに収容できるような構造のヘッドバンドを採用し、ポーチも新たに用意しました。
 これで準備はOKと思っていたのです、量産開始前に無線RF部で使用していたChipセットの半導体メーカがそのChipのIPや販売権中国の会社にまるごと売却してしまい、ファームウェアなどでいろいろ協力してくれていた韓国のエンジニアのサポート受けれらなくなってしまいました。このままでは、ファームウェアの改良などができなくなるため、ソースコードの買取などいろいろ交渉しましたが埒があかず、将来のことを考えて、結局無線RF部のChipセットを再度、最初から探しなおすことにしました。折角、基板も完成し強度試験も済ませたのに、損害は甚大です。しかし、発売後のことを考えるとChipの安定供給やファームウェアの修正は避けて通れません。
Rexwhp2 結局、その後、さらに1年以上かけて、Audio Streamをデジタル伝送するのに適した無線Chipセットを2,3種類、評価を行い、最終的に今回発売したREX-WHP2出来上がりました。結果的にワイヤレス部CDと同じリニアPCM 2ch.(16bit/44.1kHz)の非圧縮伝送となり、DAC部やデジタルアンプ部もiPodや高級Audio機器、高級サウンドボードなどで採用されているDACと同じメーカー(Wolfson)の新型を採用することにしました。そうなると音質がかなり変わりますので、再度ヘッドホンメーカーにお願いして、ヘッドホンとしての音質調整をしていただきました。着手から2年半がかりでやっとREX-WHP2完成です。

 携帯性や大きさ、装着感や音質は実際に店頭デモで確かめてみてください。REX-WHP1とはまた違った、パワフルな音を楽しんでいただけると思います。もちろん、ユニットの大きさやヘッドバンドの構造が違いますのでREX-WHP1にはかなわない部分もありますが、小型の携帯用ヘッドホンとしては「いい音のヘッドホン」に仕上がっています。どうぞお試しください。

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