CDから読み出された音楽データは、CDプレーヤの場合はDACでアナログ信号に変換するために、I2Sと呼ばれるフォーマットのリニアPCM信号に変換されます。この信号に変換する際に、またDACでアナログ信号に変換する際に44.1kHzのサンプリングクロック(fs)と、その32倍のbit Clock,それらを作成するためのMaster Clock(fsの64倍または128倍など)が必要です。これらのクロックが録音時のAD変換のクロックとずれたり(Jitter)、CDプレーヤ内部の発信回路の偏差や温度特性などで周波数がずれたり、ぶれたりすると音が変わってしまいます。CDトランスポートやCDプレーヤのデジタル出力の場合は、I2Sに変換してプレーヤ内部のDACに送り込まずに、S/PDIFのフォーマットの信号を生成して光出力端子や同軸用のRCAジャックから送り出します。この際にも基準サンプリングクロック(44.1kHz,fs)やbit Clock, Master Clock(64fsなど)が必要です。当然、外部のDACでアナログ信号に変換する場合もこれらのクロックが必要ですので、S/PDIFではデータの先頭部にプリアンブルと呼ばれる部分を設け、DAC側で受信時にこのプリアンブルからサンプリングクロックやbit Clockなどを抽出しています。CDトランスポートやプレーヤのデジタル出力とDACの入力の間には、当然、同軸ケーブルや光ファイバや送受信回路が挿入されますので、これらの部分にインピーダンス不整合などがあるとクロックを正しくDACに伝えられず、受信側でも正確なクロックを抽出できないことになります。そのため、このクロックの誤差(Jitter)の影響を抑えるために、高級機ではクロックの同期機能が用意されている機種もあります。DAC側で生成したクロックをCDトランスポート側に送りこんで、そのクロックを基準にS/PDIF信号を生成させるというものです。
CDプレーヤに振動対策を行ったり、DACとの間のケーブルを交換したり、ちょうどアナログLP時代にカートリッジやトーンアーム、ターンテーブルにいろいろ手を加たように、いろいろ工夫をして「いい音を追求する」のもオーディオの醍醐味のひとつだと思います。測定してJitterが少ないほうが「いい音」がするのか、理論上Jitterが多いはずなのに「いい音」がするのか、音を聴いてみるまでわからないのがオーディオの面白いところです。
PCをHDDトランスポートとして使用し、USB-Wireless-DACとしてのREX-Linkシリーズは、CDの方式とは再生の仕組みが少し違いますが、CDによる再生とは別の「いじるところ」がありますので、オーディオの醍醐味は味わっていただけると思います。
本Blogの「REX-Link2武者修行 編 #1」に対して「なんちゃさん」から、CDプレーヤでの再生とREX-Link2やAir Mac Expressでの再生の違いに関するコメントをいただきました。続編でも説明しますが、REX-Link(USBオーディオ)とTCP/IPやUDP上の音楽ファイル転送は少し仕組みが違います。USBオーディオはどちらかというとAVに特化したIEEE1394(i-Link)のIsochrounous転送のマネ(?)をしています。
余談ですが、i-LinkによるDVカムコーダとの間の映像・音声の転送については、私たちは約10年間付き合ってきました。最近のHD-CAMはUSB 2.0による転送が多くなってしまいましたが、私たちはまだPC用のIEEE1394インターフェイスを作り続けています。本当はi-LinkでSACDのDSD信号を取り出し、Wirelessで飛ばしたいのですが、ライセンスなどが絡み合っていますのでSACDがなくなる(?)までに商品化できるかどうか…というところです。
なんちゃです。
お取り上げいただきありがとうございます。
「USBオーディオと、TCP/IPやUDP上の音楽ファイル転送の仕組みの違い」、続編での記載を楽しみにしております。
私は未だにREX君とAir Mac Expressの聞き比べが出来てませんが、「Audio Basic」の記事では「どちらも同じぐらい」的な表現でしたね。まぁ書き手の方は圧縮音源でしか聴いてないでしょうけど。
どちらにせよ、我が家ではPC音源が、CDPに完全に取って代わっています。
音の「生(なま)感」が格段に違いますから。
ではまた。
(それぞれの記事の所にちょこちょことコメント入れさせていただくかもしれませんが、よろしゅうに。)