最初にCDプレーヤ(CDトランスポート+DACを含めて)による音楽の再生について簡単に見てゆくことにします。
CDの上にはデジタルデータとしての音楽データがトラックと呼ばれる線上に記録されています。同時にその音楽データに平行してSub-Qと呼ばれる信号が記録されており、音楽再生中にSub-Qを読み出すことにより現在位置(CDのアルバムの先頭からの時間情報、曲内での時間情報など)を知ることができます。トラックはCDの中心部から始まって、蚊取り線香のように渦巻き状の一筆書きで周縁部へと展開されています。したがって、円の周囲の長さは半径に比例しますので、同じ回転速度でも中心部では線速度が遅く、周縁部では速くなってしまいます。このままではデータの読出し速度が一定せず、D/A変換のサンプリングクロックにも影響し、音楽のテンポや音の高さが変わってしまいますので、読出しヘッド(光学レンズ)の位置によって何段階か速度を変えています。中心部では速く(500rpm)、周縁部では遅く(200rpm)回転させるわけです。音楽CDではない、データ用のCDーROMの標準平均読出し速度は150k/sec.ですので(CD-RWなどでx倍速という場合の基準、1倍速はこの150kB/sec.です)、毎秒153,600バイトということになります。音楽CDの場合も同じ標準回転数ですが、記録フォーマットが違います。
しかし、Stereo 16bit/44.1kHzでは最低でも176,400バイト/秒くらいの読出し速度がないと音楽を正しく再生できません。CDのトラック上の音楽データは適当な大きさ(約1,000バイト)ごとにブロック化され、誤りチェック用のCIRCデータが付加されています。しかし、CDの場合は先に述べたように一筆書きの渦巻状ですので「読出したデータのどこがが誤っている」ことを発見しても、簡単にもう一度読み出すという訳にはゆきません。
なぜなら、既にそのブロックは行過ぎてしまっているからです。もう一度読み出すためには、目的のブロックの前(内側)にヘッドを戻してデータとSub-Qを読み出しながら、目的のブロックを見つけるしかありません。ヘッドの移動に必要な時間やCDドライブの内部のマイコンの処理時間、ソフトウェアの処理時間などを考慮して、「目分量」で見当をつけてヘッドの移動量を決めるわけですが、失敗すると、移動量を大きくしてリトライすることになります。
音楽再生時にはこんな悠長なことをしていると、曲が途切れて戻ってしまいますので、一般的にはCIRCによるデータ欠落の穴埋めは行っていますが、「エラーチェック」は行っていません。CDの場合は、空気中で回っていますので、偏心や振動、傷や汚れなどによって読出し信号が影響を受けますので、エラー訂正なしというのは、ずっとコンピュータの世界にいる私達から見ると「ほんまかいな?」と思いますが、LPレコードだって、傷や誇り、溝や針の磨耗などいろんな問題があった訳ですから、オーディオの世界では許容範囲なのかもしれません。ちなみに、後述しますが、iTunesでCDをリッピングする際に、CD読出し時のエラー訂正をするかしないかというチェックボックスがあります。「する」にチェックマークを入れるとCDの読出し時にエラーが発生すると、正しいデータが読めるまでリトライを行います。少し、リッピングに時間がかかりますがREX-Link2を使用される場合は、こちらの方法でのリッピングをお奨めします。