ご存知のように、Internet経由で配布される音楽は当然デジタルです。同様に音楽CDに記録されている信号もデジタルです。
最近は真空管アンプのブームでアナログオーディオが復活していますので、アナログ号の接続に使用するための、信号を劣化させない高価なオーディオケーブルが沢山発売されています(ケーブル1本の値段がREX-Link2と同じくらいかそれ以上のものもあります)。
CDプレーヤの出力を真空管アンプに接続する場合もそのようなケーブルが使用されていることがあり一瞬とまどいますが、元来CDプレーヤの出力信号はCDから読み出したデジタル信号を内蔵のDACでDA(Digital to Analog)変換したものです。
デジタルシンセサイザで作り出された音ではないかぎり、一般的には演奏された音楽(楽器の音)や人の声は空気の振動となってマイクロホンで拾われます。マイクロホン内部では機械的振動が電気信号に変換され、増幅された後、AD変換されてデジタル信号として記録されます。
また、テープレコーダで録音されたアナログのマスターテープ上の音は、CDのマスタを作成する前にAD変換され、デジタル信号に変換されます。
デジタルに変換された音はPCでデジタル編集され、さらに16bit/44.1kHzのリニアPCM信号に再サンプリングされてCDのマスタが出来上がります。それがCDにプレスされて、私達が入手できるようになります。
一方、私達が音楽を聴く場合、何らかの空気振動を鼓膜で拾わなければならないため、電気信号を機械的振動に変換して空気振動を起こすスピーカが必要になります。(ちなみにヘッドホンもスピーカの一種です。最近は機械的振動を直接伝える骨伝導ヘッドホンも登場していますが)
したがって、Internet経由にしてもCDの形にしても、現在私達が入手できる音楽は既にデジタル信号になっているわけですから、スピーカを駆動するまでの間に、そのデジタル信号をどの時点でアナログ信号に変換するか、デジタル,アナログにかかわらず音楽信号をどのようにして歪ませることなく伝えて増幅するか(スピーカを駆動するためには電力が必要です)ということが、電気的なテーマとなります。
市販のオーディオ機器では、CDから読み出したデジタル信号の形式を変換してデジタルのまま増幅、スピーカのところでLCフィルタ(チョークコイルとコンデンサで構成されたフィルタ)経由でアナログ変換するというフルデジタル構成や、CDプレーヤ内蔵のDACを通過した以降はすべてアナログ信号として扱う方式など、いろいろです。
ちなみに、デジタル信号を直接出力するCDプレーヤは一般的にCDトランスポートと呼ばれ、別売のDACと組み合わせて使用されます。そのため、PCをCDトランスポートもしくはHDDトランスポートと位置付ければ、REX-Link受信機のアナログ出力はDACとして機能していると言えます。
ただし、デジタル伝送とはいえ、実際にケーブルや基板の回路パターン上を流れている信号はアナログ信号です。
デジタル伝送は、アナログ信号をある一定の閾値によって判別し、超えるものは’1’、未満のものは’0’として扱っているだけですので、ケーブルの特性が良くないために波形にオーバーシュートやアンダーシュート、リンギングが生じて方形波としての形が崩れてしまったり、ノイズが乗ったりすることで正しく論理が判別されない場合があります。
その結果、アナログに変換した波形が別のものになって、音が変わってしまうことがあります。
また、DA変換時にサンプリング間隔がふらついて元のAD変換時やCDマスタ制作のサンプリング変換時のものとずれたりした場合も、同じようにアナログに戻した際に波形が変わってしまいます。
したがって、デジタルだから雑音やひずみとは無縁と思い込むのは間違っています。
アナログ増幅の場合は前段(音の入口に近いほう)で拾った雑音がそのまま増幅されて大きな音になって耳に入ってきます。
デジタルの場合はそうした雑音の増幅といったことはありませんが、伝送中に’0’、’1’の判別が違って音が変わってしまうというデジタルならではの問題や高調波によるひずみの問題があります。
こうした原理を理解した上で、どこでアナログに変換するか、どこまでデジタルで行ったほうが有利か、などということを試行錯誤しながら決めてゆくのがメーカとしての腕の見せ所となります。
ちなみにWirelessも乗せている信号はデジタルですが、物理層(実際に電波を送受信している部分)やアンテナはアナログ技術の塊です。
次回は、REX-Linkシリーズではこうした課題についてどのように対処しているかということについてお話します。