【REX-Linkが生まれるまで】#5 Wireless伝送はデジタル、受信後にアナログ変換

 REX-Link2およびREX-WHP2ではPCから音楽データストリームを伝送するために2.4GHzのWirelessを使用しています。通信方式の説明は本ブログの6回目を参照していただくとして、今回はもう少し一般的なお話をしたいと思います。

 音楽をWireless(無線)で送るというと、大規模なものではAM放送やFM放送があります。
これらはどちらもアナログ変調方式です。AMでは搬送波(キャリア。1024kHzなどと放送局固有の周波数の電波です)の振幅の大小で音楽の波形を表します。FMでは振幅は一定ですが中心周波数からのズレ(偏移)で音楽の波形を表します。
これらは送信側、受信側どちらも処理が簡単なので昔から使用されてきました。

Wirelessヘッドホンでもだいたい5,000円くらいの製品は赤外線や27MHzくらいの電波をアナログ変調していますが、音質やノイズの点であまり上等とは言えません。
最近ではiPodなどの携帯オーディオ機器を車内で使用するためのFMトランスミッタなどでもこのアナログ変調方式が使用されています。
それらFMトランスミッタの中には「デジタル方式」と称している製品もありますが、搬送波がずれてくるのを抑えるための方式を指してデジタルと称しているのであり、変調方式としてデジタルを使用しているわけではありません
そもそも、変調方式がデジタルであれば一般のカーナビやカーステレオで再生できません。

これらに対しデジタル通信方式ではアナログ信号を送るのではなく、基本的に’0′,’1’のビット列からなるデータを送受信し、受信後いろんな数学的処理を行って「誤り」の検出や訂正処理を行います。
ただし、アンテナから飛び出したり、アンテナに入ってくる信号はアナログそのもので、どういう状態をもって論理’0’とするのか、論理’1’とするのかということが判別できなければ、音楽を送るどころの話ではありません。

電波状態もよく、通信に問題がなければ、CDやHDDから読み出された音楽データのbit列は受信機側に間違いなく伝えられることになっています。
ただし、音楽データの場合は「誤り訂正」のために何度も再送をしていると、再生する音楽データが受信側に無くなってしまい音が途切れてしまいますので、適当な時間分のバッファを持っています。

REX-LinkシリーズではLink1シリーズも含めて、入力された音楽データを次のように扱っています。

  1. CDもしくはHDDから読み出した16bit/44.1kHzのリニアPCMのデジタル信号をそのまま送信LSIのBB(ベースバンド)処理部に入れて変調して送信しています。
    いろんな形式、ビットレートの音楽データはWindowsやMacOSに含まれているUSB-AudioドライバによってリニアPCMデータに変換されUSB所定のプロトコルで送信機に送り込まれます。
  2. 受信機では受信したPCMデータをチェックし、誤りがあれば再送を要求します。
    正しければそのままDACに渡してDA変換を行います。同時にS/PDIF形式に変換し光ファイバ用にデジタル出力を行います。

 したがって、受信機まではデジタル伝送であり、かつ途中で誤り訂正処理(再送時に音が途切れないようにメモリ上にバッファを持っています)を行っていますのでPC内にある音楽データと波形が違ってしまうということはありません

 REX-Link2/1では接続する相手のオーディオアンプに合わせて選択できるようにアナログAUX入力用のアナログ出力と、光デジタル入力を持ったアンプ用に光デジタル出力(S/PDIF)の両方を用意していますので、真空管パワーアンプフルデジタルアンプのどちらにも接続することができます。

 また、REX-Link2の受信機に採用したDACは24bit/192kHzまで対応できる高性能なLSIで、DA変換時やWireless伝送時に紛れ込む高い周波数領域のノイズをカットする帯域外フィルタも内蔵しています。
このためデジタルオーディオ特有、あるいはWireless特有のサーッという高音域のノイズがなく、クリアな音を聴かせてくれるだけでなく、DACとしてもなかなかいい線をいっているのではないかと思います。

DACによる音の違いは次のような方法で確かめることができますので実験してみて下さい。

<実験1> 最初の実験は4万円以下程度のデジタル入力のないミニコンポを念頭においています。

(A)Link2の受信機のアナログ出力をコンポステレオのAUX-Inに接続して、PCでCDを再生、送信機経由で送信する。

(B)
コンポステレオでCDを再生する。

(A)ではLink2の受信機に内蔵されているDACでアナログに変換しています。(B)ではミニコンポのCDプレイヤ部に組み込まれているDACでアナログに変換しています。アナログに変換した後は同じパワーアンプとスピーカを使用しています。
つまり、「Link2の受信機に内蔵されているDAC」と「ミニコンポの内部に組み込まれているDAC」を比較していることになります。
どうでしょう、音に違いはありましたか?

続いて、PCでCDをWAV(1.4112bps無圧縮)やAIFF(1.4112Mbpsロスレス)などでHDDにリッピングした後、再生してみて下さい。
このクラスのミニコンポでは(A)のLink2内部のDACを使用した方がきっと気に入っていただけると思います。

<実験2> 光デジタル入力(S/PDIF)を持つアンプ(DACが内蔵されています)が用意できる場合は、Link2の内蔵DACとアンプに内蔵されているDACで音がどう違うか確かめることができます。

(C)Link2の受信機のアナログ出力をAUX-INに接続して、PCでHDDから音楽を再生、送信機経由で送信する。

(D)Link2の受信機のS/PDIF出力をアンプのデジタル入力に接続して、PCでHDDから音楽を再生、送信機経由で送信する。

(C)ではLink2内部のDACでアナログに変換され、(D)ではアンプ内部のDACでアナログに変換されます。アナログ変換後は同じパワーアンプ、スピーカで条件は同じです。
いちいちつなぎかえるのが面倒ですが、音楽に合わせて気に入った方の接続をご使用下さい

今回は音楽の入口から出口までの間のお話を少しさせて頂きました。次回は別の面からみたWirelessについてお話します。

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