【REX-Linkが生まれるまで】#6 なぜWirelessにこだわるのか

 当社はREX-Link1以来、PCとオーディオアンプ間の接続にWirelessを採用しています。
今回発売したREX-Link2でも同様です。技術的にもハードルが高く、コストも開発費用も高くつくWirelessを採用している理由について少し説明させていただくことにします。

 一番目の理由はノイズ、ハム音(ブーンとかビィーッとかいうあの音です)対策です。
「PC-Audio」を楽しむためには、つまりPCで音楽やオーディオを「いい音」で楽しむためには「PCに音楽を入れるもの」「PCから音を出すもの」が必要です。
後者には最近のWindows Vista搭載PCのマザーボード上に組み込まれているHD-Audio LSI、PCIのSoundアドオンボード、USB接続のAudioデバイスがあります。

PCIのボードは設計や回路、実装が良ければ、かなりノイズに強いものが作れます。
しかし、PC本体、マザーボードなどはEMI対策はなされていてもAudio領域の可聴雑音やハム音、放熱ファンの音やノイズ、電源ユニットの鳴きなどには無頓着な製品が大半です
そうした雑音対策がほとんどなされていない現状では、すべての部品で対策を施したオーディオ専用のPCを提供するしかありません。
PC本体はモデルチェンジが年に3回も4回もあるような世界で、しかも特注PCで…となるとユーザも限定されてしまいます。

それならPC本体の外部にUSBケーブル経由で接続すればよいではないかということになります。
実際、雑誌やInternet上ではそういう意見が多く見られます。
しかし、実際に詳しく調べてみるとノイズレベルはPCIボードタイプとあまり変わらず、設計の悪いものではPCIボードよりもノイズが多いものもあります。

その理由としては、前々回などでも触れましたようにUSBはデジタル通信ですが、実際にケーブルがつながる部分はアナログで、V-Bus(+5V)ラインやGNDラインからはノイズやハムが混入するためです。

アマチュアでもオーディオアンプを何台も作ったことがある人には常識ですが、オーディオアンプではワンポイントアースが原則です。
これに対し、PCなどでは多層基板を使用していることもあってニアバイアースが使用されていますので、よく注意しないとすぐにGNDループができて同相ノイズによりハム音が出ます

身近な例では、カーナビやカーステレオのAUX入力にiPodなどの携帯オーディオ機器のイヤホン出力を接続し、シガーライタから電源を取った場合にGNDループが出来てしまい、"ビィーッ"という音に悩まされます。REX-Linkシリーズの車載Kitではこの嫌なノイズを除去するためのノイズキャンセル回路を組込んでいます。

当然、USBオーディオインタフェイスの内部ではデジタルGNDとアナログGNDを分離電源のデカップリングや完全分離などの処理を行いますが、それでもノイズが残ってしまうことがあります。

一方、WirelessではGNDをスパッと分離することができます。当然、Wirelessには固有の問題が出てきますが、多くは可聴帯域外の高い周波数のノイズですのでフィルタを工夫すれば聞こえなくすることができます。
また、Wirelessの場合は有線接続と違って、混信や他の電波からの干渉などのために通信は不安定になりやすいという欠点もありますが、それらはRF部やBB部のLSI、ファームウェアの改良により克服することが可能です。
 
 当社がPC-AudioインターフェイスにWirelessを採用する二番目の理由は「使い勝手」です。

みなさんはPCとオーディオセット(アンプ)を自宅でどんな風に配置されていますか?
PCとオーディオセットを並べて、あるいは重ねて(?)配置されている方は少ないのではないかと思います。

30年くらい前まではステレオというと豪華な木製キャビネットの一体型や3点セパレート型が一般的で、応接間などの床の上にどんと置かれていたものです。
今はそういうことはないと思いますが、それでもミニコンポは3点まとめて置かれていることが多いのではないでしょうか。

そうしたオーディオセットと離れたところにあるPCをケーブルで接続するというのは不便なので、最近はPC用スピーカも売れているのではないでしょうか。とはいえ、安価なPC用スピーカで「いい音」を聴くというのはちょっと無理があります。

 製品を企画し設計・開発を行う際には、「こんなふうなシーンでこう使ってほしい」という商品コンセプトを決めるだけでなく、その製品の使われ方を想定することが大切です。
REX-Link1/Link2の場合、音楽やオーディオが好きで自分の気に入ったオーディオセットを所有、あるいは購入予定で、ノートPCをよく使用されている方を想定しています。

 自分の書斎や自室でノートPCを使用しながら、オーディオセットから好きな音楽をいい音で聴くシーンでは、PCの中に楽曲を入れておきさえすれば、いちいちCDを探してCDプレーヤにセットしなくともPCからすべてコントロールできます。
 例えば、コタツの上にノートPCを置いてWordやExcelで仕事をしながら、同じPCで好きな音楽を再生すれば、いちいちコタツから立ち上がってオーディオセットにCDをセットする必要はありません。当然、聴くならオーディオセットからいい音で聴きたい。

こんな使われ方を想定すると、PCとオーディオセットのインターフェイスはWirelessでなければ実現できません

「Wirelessならではの使い勝手を提供する」、これもREX-Linkのコンセプトのひとつです。

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