ワイヤレスヘッドホンをつくる その8 髪の毛をチリチリにしないために…電池で苦労する<前編>

ワイヤレスヘッドホンを文字通りワイヤレスで使えるようにするためには、受信部、DAC(デジタル通信の場合は必須)、アンプ部とそれらを動作させるための電源を供給するための電池が必要です。電池は小さくて軽く液漏れなどの事故を起こさないようなものを選定する必要があります。また、回路全体の消費電力を抑えるとともに、長時間、電池がもつように電池の容量にも注意する必要があります。本Blogでも既に述べましたが、ヘッドホンのハウジングはスピーカボックスのようなものですから、あまり大きな電池を入れるとハウジング内部の容量が減少して、オリジナル(有線接続時)の音と変わってしまいます。とりわけ、片側にのみ電池を入れるという構造ではバランスを取るのが難しくなります。それに装着した場合に左右の重さがちがうと首筋が疲れます。

 最も簡単なのは単3か単4の乾電池を2個ほど、ヘッドバンドに配置するという構造です。つまり、即頭部の左右に乾電池を1本か2本ずつ貼り付けるような感じになります。こういう構造のワイヤレスヘッドホン(赤外線方式の製品はコードレスヘッドホンと呼ばれていることが多いようです)などもありますが、ヘッドバンドの調節が難しく装着した感じがあまりよくないので採用しませんでした。また、無線方式の場合、消費電力が少ないものでも100mA程度、多いものでは300mAを超えるような場合もありますので、単4乾電池X2本では2?3時間程度、単3乾電池では3?4時間程度しか持ちません。
 乾電池と同じサイズの充電式のニッケル水素(Ni-MH)電池もデジカメ用としてポピュラーですが、単位電圧が1.2Vと低いので2本直列でも2.4Vにしかならず、ヘッドホン内部回路を動作させるための3.3Vの安定した電圧を作るためには、DC-DCコンバータでいったん5V程度に昇圧しなければなりません。このDC-DCコンバータが曲者で効率があまりよくなく、しかも自分自身でもかなりの電力を消費します。また、乾電池やNi-MH電池の場合、日本の有名ブランドの製品を使用しないと液漏れなどの事故の心配があります。実際に、ある音響メーカが販売している2.4GHzワイヤレスヘッドホンは内部で中国製のNi-MH電池(単3型)を使用していますが、「事故の恐れあり」ということで回収/交換をしていたことがあります。電池を使うのは一見簡単そうですが、子供の頃よく作ったマブチモーターと電池を使った模型工作のような感覚で電池を使っていると大変な目にあいます。

 そういうことで、REX-WHP1ヘッドホンの内蔵電池としてはLi-ion電池を採用しようということになりました。電池のもち時間(連続11時間)を実現するために、当時のiPodに内蔵されているのと同じようなサイズ(1150mAh)のLi-ion電池を採用することに決めたのです。

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