前回はフレームの基本単位(Sub Frame)について説明しましたが、C bitについては文章が長大になるので説明できませんでした。ということで今回はC bitについて説明することにします。
C bitの正式名称はChannel Status bitですので、文字どおりChannelのStatusを表しています。したがって、各Channelごとに独立している必要がありますので、ひとつのFrame内の各Sub Frameは独立したC bitを持っているということになります。1bitではややこしいことは表現できませんので各ChannelのStatus情報はFrame#0からFrame#191までの各Frame内の各Sub Frameに含まれているC bitを取り出して順番に並べ、全長が192bit(24Bytes)のデータを作成します。送信側はあらかじめ、バッファレジスタやメモリ上にこのデータを用意しておき、1サンプリングあたりの音楽データと一緒にしてBMCでエンコードします。受信側は受信したSub Frameの中からC bitをせっせと取り出し順番にバッファレジスタやメモリ上に格納します。
前回のBlogで「同一Frame内のSub Frameは同じU bit(C bitも)を持っている」と書きましたが、これは正確には「AES(Pro用)のmonoral、One Byte Mode時」の話で、私たちが使用しているS/PDIF(民生用)モードやAESでもWord ModeではU bitもC bitもそれぞれ独立してSub Frame内に存在しますので、Sub Frameごとに192bitのデータ列が存在し、Frameごとにそれらが2個ずつ存在します。前回の記述は正確さを欠き、お読みいただいた方々が誤解されるような表現であったことをおわびいたします。
S/PDIFの最新規格(IEC60958-3 Ed.3 2006 May)ではC bitの192bitのbit列のうち、先頭部の41bitが使用されます。その41bitの意味について表にまとめましたので参照してください。
■bit0?bit7■
|
■bit16?bit31■
LPCM, Mode=’00’の場合 |
■bit32?bit41■
LPCM, Mode=’00’の場合 |
残りの151bitは未使用です。以前は先頭の32bitが使用されていましたが、現在の最新規格では41bitに拡張されています。実際に出回っている機器には古い規格に基づいたものの方が多く、Net上の情報もかなり古いものもありますので、実際に使用される際には原典を参照するようにしてください。C bitのbit数以外にもかなり拡張されており、最新版ではデジタルTV用に、画像表示のタイミングに合わせて音声を遅らせるリップシンク機能などのパラメータをU bitに埋め込む仕様などが追加されています。LPCM以外のAC-3やAAC、DTSなどの圧縮音声データに関する仕様はIEC61937(S/PDIF Coded Audio)を参照してください。日本国内ではJEITA(旧EIAJ)CP-1201「デジタルオーディオインターフェイス」という国内規格がありましたが2002年2月に廃止され、IECの規格に一本化されています。
表中の各bitの番号(b0?b41)はブロック内のFrame番号に合わせてあります。ただし、b8からb15の1Byteに関しては今回は説明していません。この1ByteはCategory codeと呼ばれ、音楽データの出自を記述するためのcodeです。元々、CDから読み出したのか、どこの国で放送波を受信したのか、DAT(デジタルオーディオテープ)なのか、MDなのかということがこと細かく規定されています。それを説明していると、それだけで3ヶ月くらいかかりそうなので今回は省略します。
私たちの製品であるREX-Link1,REX-Link2,REX-Link2EXの受信機にもS/PDIF(光)の送信機能が含まれていますが、PCからは音楽データ(I2S)しか送られて来ませんので、受信機のソフトウェアでU bitやC bitを設定しています。U bitは未使用’00’ですが、REX-Link2以降の製品では、光ケーブルで受信機とMDを接続してNet上のデジタル音楽Streamを録音できないよう、またPC内の音楽データをデジタルのまま複製できないようにCopyright Protect bit(bit2)を「著作件保護有り」にSetしています。でも、接続相手機器のMDやPCで無視されれば意味がありません。
アナログオーディオはこんな面倒なことはなかったのですが、デジタル化でどんどん面倒なBlackBoxになり、アマチュアで趣味でアンプなどを作る人達を締め出してしまっている理由のひとつにもなっています。手の出しやすい真空管アンプの部品を求めて秋葉原や日本橋のパーツ屋さんをうろついているのは孫のいそうなじいさんばかりで小中学生はとんと見かけません。このままでは日本のエレクトロニクス産業の将来は……どうなるのでしょうか?
次回からは、Category Codeに簡単に触れて、S/PDIFの実際の機器への実装とそれを採用しているHDMIのAudio信号についてblogを続けて行きたいと思います。
———————————–
■番外編■
先月(6月9日から13日)、AppleのWWDC(開発者会議)がサンフランシスコで開催され、月曜から金曜まで毎日、私たちのUSA事務所があるサンタクララ(わが事務所はintel本社の向いにあります)からサンフランシスコまでCaltrainという鉄道で片道1時間半かけて通っていました。
ちなみに「鉄ちゃん」の読者の方もいらっしゃると思いますのでCaltrainのことを少々。Caltrainはオールステンレス製の2階建て客車(名古屋にある日本車両という会社が1985年に製造したというプレートがドアの上に貼り付けられています)を電気式ディーゼル機関車で牽引(サンフランシスコ発、ターンテーブルがないのでサンフランシスコ行きは機関車が後押し)しています。客車の1階部分の半分が自転車置き場というなかなかエコな乗り物です。
そのCaltrainの終点のサンフランシスコ駅から4th.Streetを10分くらい歩くとWWDCの会場に到着しますが、その途中の古い2階建てのレンガ造りのアパートの入口をふと見ると six apartやtypepadというロゴが目に入りました。なんと、そこが本blogで使用しているtypepadの開発元six apartの本社でした。IT企業の本社は私たちの事務所のあるシリコンバレイには星の数ほどありますが、まさか、サンフランシスコの元倉庫街の古ぼけたアパートにあるとは思いませんでした。写真を掲載しておきますのでご参照ください。IT企業よりは真空管アンプの会社の方が似合いそうな建物です。