#35 番外編 CES2010

 今年もCESに行ってきました。今週一杯はSanta Claraに滞在していますので番外編でCESで見たものの報告をします。いろんなWebで速報版がでていますので、それらに掲載されていなかったものについて触れたいと思います。

 今年のCESはSands Expo(10年前までCOMDEXの際に、私たちがBoothを出していたなつかしい展示場です)、South Hallの1/4、Hiliton展示場の1/3が使用されず、人出は12万人と昨年を7,000人ほど上回ったようですがずいぶんと縮小されていました。狭くなった分、混み合っているような印象を受けましたが主催者の作戦と思います。

 High-Performance Audio(CESでは高級Audioをこのように呼んでいます)の会場もHotelの2フロア+4室、会議フロアの一部に縮小されていました。CESは東京インターナショナルオーディオショウのように一般のオーディオ愛好者に音を聞いてもらうことが目的ではなく世界各地から来るバイヤーに新商品を見せて商談するための展示会ですので、Hotelの一室のベッドを運び出して音を出しています。そして、大声で挨拶や商談をしていますので、とてもじっくりと音を聴けるような雰囲気ではありません。 そういう中で目立ったのは、ほとんどの部屋でNoteBook PC+iTunesでUSB経由のデモを行っていたということです。商談中、CDの掛け替えを気にしなくともよい、いろんなCDを持ち込まなくともよいというメリットがありますが、PCとUSB接続できるDACやDAC内蔵アンプなどが着実に増えていることは間違いありません。また、USB-Bポートだけでなく、USBフラッシュメモリ上の音楽ファイルの再生に対応するためのUSB-AポートやWiFi(LAN)用のアンテナ、EU圏内のDVBに対応した同軸ケーブルコネクタを装備したDACやアンプも目立ちました。どうやらアナログFM放送の時代は終わりつつあるようです。CDプレーヤも何回かRippingして一致するかどうかをCheckしてから、バッファメモリ上のデータを送り出すというような製品が増えています。

 NetWork Audioなどが普及するのを見るのは、草創期からLANに関わってきた一人として嬉しく思いますが、メーカの関係者の多くが著作権保護にまるで無関心なのには心配になります。NAS内の音楽データがNetwork上に漏れ出すと止めようがなくなりますから、そのうちNetwork DACなどを作っているとWinnyの作者のように起訴されたり、Memory Bufferなどを持つDACのメーカが録音保証金を払わなければならなくなるかも知れません。

 著作権が保護されずに作曲家や演奏家、CDなどの制作者が生活に窮するようなことになれば、コンテンツが少なくなり(著作権の切れた50年前の演奏ばかりが残る)、「コンピューター、ソフトなければ、ただの箱」と同様、「DAC、コンテンツなければただの箱」になってしまいます。

(1)dCSのUSB DAC
 DACで有名なUKのdCSもdCSとしては初めてのUSB-DACを発表、デモしていました。24bit/96kHzのUSB Audio Streamにも対応しているとのことです。デモは音源がないとのことでCDを非圧縮AIFFでRippingした16bit/44.1kHzのデータをiTunes を使用してMac Proから送り出していました。他社の製品とちがうところはdCSらしく、外部クロック生成機器と接続し、外部クロックを供給しているところです。パンフレットにはUSB Audio StreamをIsochronous転送のAsyncモードを使って伝送していると記載しており、わざわざ「SRCのAsyncモードと誤解しないこと」と記述しています。ただ説明はUSBの規格書の記述そのままです。本連載で順次説明しますが実際に行われていることとは違いますので、外部クロック(fs)とUSB Streamをどのように同期させているのか興味があります。USB Audioの音質を追求するとこのような形になるのかも知れません。私たちも昨年夏にすでにDACからのfs(LRCLK)入力をS/PDIF出力のMaster Clockとして使用するUSB Transportを作成し、EUのメーカーに組込用に提供しています。

 DAC以降の機器はJeff RolandのアンプとFocalのスピーカーを使って行われており、なかなかいい音でした。ちなみにJeff Roland Gr.の部屋でも同じDAC,Clock発生器を使用してデモが行われていました。

 Model名はDebussy DACですが、まだdCSのHP<www.dcsltd.co.uk>には掲載されていません。USB->S/PDIFコンバータの方のModel名はPUCCINI U-Clockで、こちらからfs Clockを供給していました。Debussy内蔵のClockが信用できれば必要ないと思えるのですが。あまり写りがよくありませんが写真-35-1,2を参照してください。

P35-1 
<写真-35-1>一番上の段がDebussy DAC、3段目がPUCCINI U-Clock

P35-2
<写真-35-2> dCS Debussy DAC

(2)PS AudioのuPnP対応DAC(USB入力もあります)
 PS Audioの部屋ではuPnPを使用して、iPod TouchやiPhoneですべてをコントロールするDAC(Model名は PS PerfectWave DAC)のデモを行っていました。iPhoneをuPnP対応コントローラとして使用する機器で有名なものはLinn DSシリーズですが、PS Audioの製品は選曲、演奏開始、停止だけでなくDACの入力切り替えやその他の機能設定などすべて行うことができます。PCとLANで接続した状態でiPhoneからコントロールを行うためには、PCがDLNAサーバとして機能することが必要ですがWindows7の標準機能として組み込まれていますので問題はないようです。したがって、LANポートが必須ですが、PerfectWave DACではOptionでLANポートを組み込むようになっています。Network Optionなしの場合は一般的な赤外線リモコンを使用しますが、こちらはあまりおもしろくありませんでした。Digital入力はDLNA対応Network(24/192対応)、USB(24/96対応)、AES,COAX、Toslink,HDMI(ただしコネクタのみHDMIでPS Perfect Transport専用I2S入力)です。こちらは<www.psaudio.com>に掲載されていますので参照してください。

(3)MagicoのHardDisk Tranport?
 テクニカルブレインの黒沢社長と会場で出会い、「別の階(35階)でアンプのデモを行っているからおいでよ」と誘われてMagicoの部屋にいってみました。新製品の高級スピーカーをテクニカルブレインのプリアンプ+パワーアンプ4台でバイアンプ駆動していました。音源は2track/38cmのオープンリールのテープデッキとUS$60,000というハードディスクDAC(?)でした。大きさは大型のPCケースと同じで詳しい内容は不明でしたが、とにかくCD直接ではなく、HDD上にRippingしたものを再生しているというのが驚きでした。MagicoのHPにはSpeaker Systemしか掲載されいませんので、どこかの製品と思いますがUS$60,000という価格にも驚きました。

(4)ついでに
 私たちの製品、Super Speed USB(USB 3.0)対応のHostAdapter 2種類CES直前にLogo認証Testに合格し、CESのUSB Tech Zone NEC Bothで展示・デモが行われました。Logo認証Testの合格は国内ベンダでは今のところ私たちだけです。USB 3.0やUSB 2.0というのは規格名を表すというように改訂され、それぞれが下位の規格(数字が小さいもの)を含むというようになりましたので、USB 2.0対応のUSB DACと称していてもほとんどの製品が旧USB 1.0のFull Speed(12Mbps)で動作していますので惑わされないようにしてください。

 Audio Stream(LPCM)を対象とする場合はFull SpeedではIsochronous転送に従う限り24bit/96kHzが最高です。24bit/192kHzをIsochronous転送で扱うためにはHigh Speed(480Mbps)が必要となります。Boothの写真は写真-35-3,4です。

P35-3
<写真-35-3>左上のパッケージ2個が弊社HostAdapter

P35-4
<写真-35-4>右側2製品が弊社HostAdapter

 寄り道はこれくらいにしておきます。USB Audioはアマチュアでも自作できそうなので真空管アンプつくりの次の楽しみとして浮上しそうです。しかもdigitalのいいところ(誰がつくっても差がない)でEUの歴史あるメーカーが発表しているUSB DACであればそう難しくはありませんし、F/W、H/Wを正しく作れば音質面でもいい勝負ができます。Network AudioはDLNAなどライセンスが絡んでいますのでアマチュアでは手を出しにくいという問題があります。USB Audioで自作の楽しみを取り返しましょう。

 それでは、このへんで。

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