#2 その18 電源について(続き2)

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Posted on 28th 12月 2007 by admin in ものつくりの現場から

 前回、説明した部品を使用して組上げた電源部(回路図は前々回を参照してください)の実測結果を紹介します。

(1)AC入力部。
 まず、AC100Vラインの実測です。以前も述べましたが、ビル全体の受電設備から直接、個別のブレーカ経由でコンセントに配線されていますが、同じフロアにPCが100台くらい、プリンタやネットワーク機器、計測器など多数のデジタル機器が稼働中です。ACケーブルも高級品から普及品までいろいろ試してみましたが、いろんなノイズが乗っていることが判ります。ノイズは無い方が理想的ですが、蒸留水を飲んでも美味しくないように「いい音」になるかどうかは音を聴く人が判断すべきと思います。ただし、メーカとしてはノイズで雰囲気をぶち壊さないよう、できるだけ混ざらないようにしておくべきと思っています。AC100Vに乗ってくる高周波ノイズの波形(AC100Vラインから0.1uF/1kVのフィルムコンデンサ経由で高周波分のみを抜き出しています)は写真-1を参照してください。60Hz(関西電力の地域ですので)?75kHzくらいまでのノイズがピークで5V程度乗っています。ちなみに、市販されている並列型ノイズフィルタ(Noise Harvester)を使用した場合の同じ条件の波形は写真-2です。このフィルタは家庭内のインバータなどから漏れて来るノイズを対象としているようで、PCなどのスイッチング電源などの高周波にはあまり有効ではないようです。
 ACラインフィルタ通過後のAC100Vの波形は写真-3です。高い周波数のノイズがカットされ、60Hzなどの低い周波数のノイズレベルもかなり改善されています。

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写真-1
写真-2
写真-3

(2)直流部。
 ダイオード2個で両波整流を行い、4700uFで平滑した非安定化直流波形が写真-4(AC成分のみ拡大)です。まだ、リップルが残っていますが、大容量コンデンサの威力でリップルの底の部分が8V以上あり、力が発揮されています。レギュレータの寄生発振もないようです。また、トロイダルトランスの二次側では、高い周波数のノイズがトランス自身の周波数特性によりカット(減衰)されていることがおわかりと思います。
 レギュレータの出力は+5Vの直流で寄生発振などはありませんが、10mVp-p程度のリップルノイズが混入しています。このリップルノイズはDC出力をOFFにしても同じレベルでDCラインに乗っています。AC100V電源ケーブルを外すと、このリップルが消えますのでGND(大地アース)線から回り込んでいるようです。基板上のGNDをラインフィルタのGNDに直接接続したり、金属製のシャーシ経由で接続したりしてみましたが大差はありませんでした。
 負荷を0.1A、0.25A、0.5A、1Aと変化させるとレギュレータの入力(整流ダイオードの出力)の電圧レベルが下がってきます。負荷を1Aとするとリップルの底が4V程度になってしまってDC出力もそのまま出てきてしまいます。トランスの容量から考えて元々無理ですので、負荷は500?600mA以下で使用すべきと思います。500mA負荷時のレギュレータの入力波形は写真-5です。リップルの底が8Vを割りかけており、レギュレータの性能から考えると、これくらいの負荷で使用すべきです。同時にレギュレータのヒートシンクの温度も測定してみましたが、45度程度で問題はありませんでした。

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写真-4(AC成分のみ拡大)
写真-5

 直流に高周波ノイズやインパルス性のノイズが乗っている場合は写真-6のような「DC電源ライン用ノイズフィルタ」を使用すればカットする(減衰させる)ことができます。今回の電源では写真-7(フィルタ挿入前)、写真-8(フィルタ挿入後)のように効果はありましたが、劇的な改善とまではゆきませんでしたので、このノイズフィルタは使用していません。

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写真-6
写真-7(フィルタ挿入前)
写真-8(フィルタ挿入後)

 デジタルオーディオ機器の電源部は三端子レギュレータ1個で簡単に済まされていることが多いのですが、基本に立ち返って検討し、試聴を繰り返すとなるとかなりの時間と労力を必要とします。さらに、メーカの場合はVCCIなどのEMI対策、PSEなどの安全対策を行わねばなりません。音楽を楽しんでいる最中に電解コンデンサがボーンと爆発して白い粉が部屋の中に飛び散るというのは興ざめですので、自作される場合でもきちんと設計・製作しておくことが肝要と思います。

 今年2月にスタートした本Blogも10ヶ月を経て、新しい年を迎えることになりました。本年中のご愛読ありがとうございました。また、何人かの方からはコメントを頂きありがとうございました。これからも頂いたコメントには本Blogで回答させていただきたいと考えています。時には新たに実験が必要になることもありますが、時間がかかってもなるべく正確に回答させていただくつもりです。
 DACの出力部のDCカットコンデンサやBatteryについて以前にコメントを頂いたkobaさんからは、フィルムコンデンサやBattery変更の結果のコメントを頂きました。オーディオマニアの特権で、ご自分の好みに合わせていろいろと改造していただくのは大歓迎です。どんな料理でも、最後には自分の好みに合わせて調味料を使うように、ご自分でチューニングされることは必要と思います。私たちメーカとしては「いい素材」を提供することが基本的な役割だと考えています。DAC kitやHDMI Audio Splitter kitにもご期待ください。

 オスカーピーターソンの訃報が昨日飛び込んできました。彼の音楽のように皆さんに楽しんでもらえる製品つくり、彼の音楽を楽しく聴いてもらえる製品つくり、そして皆さんで意見交換しながら楽しめるBlogを目指して来年も頑張りたいと思います。2008年はCESのAudioセッションの様子の紹介からはじめて、DACつくりやHDMI Audioなどの話題を中心に展開してゆく予定です。今回、紹介した電源部も部品セットやKitのような形で提供できたらとも考えていますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、皆様よいお年をお迎えください。来年もよろしくお願い申し上げます。

#2 その17 電源について(続き1)

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Posted on 20th 12月 2007 by admin in ものつくりの現場から

 前回は試作した電源ユニットの回路を紹介しました。今回は部品について紹介してゆきますので、ご自分で作成される際の参考にしていただければ幸いです。

(1)ACライン用ノイズフィルタ。
 前回も触れましたが、ACラインに乗っかって侵入してくる高周波ノイズをブロックするためにはノイズフィルタが有効です。もともとコンピュータ機器や医療機器用として販売されていたものですが、入手も容易なのでTDK製のZUB2203U-11を使用することにしました。寸法やスペックはTDKのURLを参照してください。このフィルタは3Pのインレット、それにヒューズホルダが一体化されているので大変使いやすくなっています。本Blogの「その12 電線音頭♪♪」で取り上げたように、電源ケーブルを取っかえ引っかえ試聴するには3Pのインレットが必要です。ちなみに、それらの電源ケーブルで使用されているACプラグは松下電工製の医療機器用ACプラグ(WF5018)と同じ金型(National,松下電工ロゴは削ってありますが)を使用しているものが多く、そのまま売っていたり、端子部に金メッキやロジウムメッキを施したものが販売されています。ご自分でケーブルを作成される方は松下電工製の電設資材を取り扱っている電材店を覗いて見てください。バラ品なら900円くらい、青と白の斜めストライプの個別箱入りで1,200?1,400程度で購入できます。
 話を元に戻して、このラインフィルタはカバー(ケース)が3Pインレットのアース端子と接続されていますので、レギュレータ回路部のアースポイントとの接続方法について、最もハム音(ブーンという60サイクルもしくは50サイクルの音)やノイズが少なくなる方法を組上げた後に実機で試聴や測定を行いながら決める必要があります。
20071220a

(2)トランス。

 AC100V電源はACラインフィルタを通過した後、電源スイッチを経由してトランスの1次側に接続されます。電源スイッチはAC100VのON-OFF用として安全性マークが付けられたものをお選びください。また、電源ON-OFF時のプチッという音が出ないようにスパークキラーを入れておく必要があります。直流回路ではスイッチの接点に並列に入れますが、交流の場合はAC100Vの2線間に入れます。
20071220b_2  ACラインから侵入してくる高周波ノイズをカットするためには、トランス入力の方が有利ということもシリーズレギュレータを採用した理由のひとつです。トランスはいろんなタイプがありますが、有名ブランドのオーディオアンプ(プリアンプや、プリメインアンプのプリアンプ部、DACなど)でよく採用されているNuvotemの基板実装タイプのトロイダルトランスを採用することにしました。スペックや寸法はNuvotemのURL<http://www.nuvotem.com>をご参照ください。本電源ユニットで採用したのは70040Kというモデルで2次側が7V×2(各5VA)、1次側が115V×2の製品です。2次側で整流後、DCで8.5V程度必要ですので、容量や電圧値を考慮してこのタイプにしました。トランスの2次側には一般的に√2倍程度の電圧が出ますので、1次側115Vを100Vに接続して、ちょうどよいくらいです。容量についてはREX-Link2EXの受信機の消費電流が約80mAほどですので、逆にシリーズレギュレータの負荷が少なすぎて発振しないかと気になりますが、他の用途でも使用できるように最低でも600mA程度は取り出せるようにしておきます。

(3)平滑用ケミコン。
 トランスの2次側はそれぞれ7V(5VA)の巻線になっていますので、整流用ダイオードで両波整流します。整流後はコンデンサで平滑する必要があります。前項でも触れたようにトランスの2次側は記載の電圧の√2倍程度の電圧が出てきます。整流用ダイオードによる電圧降下(0.6V)もありますが、整流後10V近くの電圧が出てきます。平滑用の電解コンデンサの耐圧は大きなリップルなどにも耐えるように、3倍以上を選択することと電解コンデンサのカタログに記載されています。DAC出力などの信号用は別として、電源の平滑用はカタログの記載に従っておかないと、最悪の場合は爆発や液漏れを起こしたり、寿命を短くする原因となります。
 レギュレータの入力側には4,700uFという大容量のものを使用し、リップルが少なくなるようにします。2次側はあまり極端に大きいと、小容量負荷の場合はOFF時の放電に時間がかかったり、ON時の突入電流でレギュレータの保護回路が誤動作してしまうことがありますので、1000uFとします。
 コンデンサ選びですが、信号用同様、各社からいろんな製品が出されているので選択に困ってしまいます。最後にはヒアリングテストを行いながらいいと思うものを選ぶしかありません。
20071220c_2  実験用に購入したのはニチコンのKGシリーズ(オーディオ機器電源平滑用)、日本ケミコンのAJシリーズ(Audio用)です。日本ケミコンのAJシリーズはLotごとに実測データの試験成績書付で納入されます。ニチコンのKGシリーズは端子が金メッキの製品(今回使用した1,000uF)もあります。その他にも候補は一杯ありますが、比較試聴している時間がなく、今のところ結果をまとめて本Blogで報告できるような段階ではありません。いずれ、報告したいと考えていますのでご期待ください。各電解コンデンサのスペック等はメーカ(ニチコン日本ケミコン)のURLを参照してください。
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(4)整流用ダイオード、シリーズレギュレータなど。

  整流用のダイオードは30年くらい前からのベストセラー10D1、レギュレータも同じく30年くらい前からのベストセラー7805(5V/1A)です。どちらもジェネリック医薬品のようにセカンドソースが多数出ていますので入手しやすいものでOKと思いますが、レギュレータの場合は内部回路などの差により発振しやすかったり、パッケージにより熱特性が変わっていたりしますので注意したほうがよいと思います。整流は、ダイオードを4個使用するブリッジ回路よりも電圧降下が少ない両波整流回路を使用しました。レギュレータの2次側(5V定電圧出力側)から1次側(入力側)に接続されているダイオードは、電源OFF時、Link2EXの消費電流が少なく、かつ2次側の平滑用電解コンデンサの容量(1000uF)が大きいため、電圧がなかなか放電されて下がらず、1次側の方が先に放電されて電圧が低くなってしまった場合に、レギュレータを保護するためのバイパスです。普通はなくともよいのですが、負荷にくらべて余裕たっぷりの電源を使用する場合には必要です。

 その他に関しては、次回、2007年最後のBlogで説明いたします。

#2 その16 電源について

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Posted on 13th 12月 2007 by admin in ものつくりの現場から

 11月22日以来、本Blogの更新ができなったことをおわびいたします。実は現在、写真のようなHDMI-AUDIOスプリッタを開発中で、そちらに追われて本Blogがおろそかになってしまいました。
Hdmi_audio_a   Hdmi_audio_c  Hdmi_audio_b
<写真1>

 以前にも述べましたが、「Audioの楽しみ」にもいろいろあり、アンプを自作されたり、ご自分で気に入った装置をつくられる愛好家の方も沢山いらっしゃいます。しかし、世の中がどんどんデジタル化され、エレクトロニクスの世界も発展してくると、そのような愛好家にとって困ったことが生じてきました。それは、DACやアンプを作ろうとしても、部品が入手できなかったり、リフロー炉がないとハンダ付けできない(最近のAudio用DACの新製品は携帯機器への組込みを想定しているため、5mm角のBGAパッケージが中心で裏にはボールペンのボールのような足がびっしりと並んでいます)、プリント基板が必要などという問題が山積していて、どうにもなりません。そのため、結局、自作できるのは真空管アンプだけということになります。これはメーカにとっても同様で、REX-Linkで使用しているRF部やDACなどは5,000個/Lotで携帯電話の実装ラインの合間を縫って実装しなければならないので大変です。結局、小規模のAudioメーカも、生産設備が不要で手作りが出来て、金型代や基板設計費も要らない真空管アンプしか作れないことになります。

 そのような状況ですので、Audio愛好家にとって、Blu-RayやHD DVDを自作のアンプや自分が今まで情熱を注いで組み上げてきた装置で視聴するというのは困難になりつつあります。現実は、Playerの2ch Down-Mix出力を利用するか、AVアンプを別に買うかという選択しかありません。そこで、<写真1>のようなHDMI-Audioスプリッタを開発し、皆さんにユニットとして、DACユニットやS/PDIF出力変換ユニット、さらには自分で音作りが楽しめるようなSoftware開発Kit(実際はPCを接続してパラメータを変更して、ROMに書き込むだけですが)を順次提供し、皆さん自身の手にAudioの楽しみを取り返してもらおうという計画を実行に移すことにしました。このスプリッタを使用すると、HDMI信号に含まれている、すべてのAudio FormatのAudio信号を取り出して利用することができます(映像信号はそのまま、HDCPコントロールを行いながらスルーします)。ただし、Dolby TrueHDやDTS-HDなどのHigh-Bit-Rate信号は取り出せますがデコーダは含まれていませんので聴くことはできません。聴けるのはリニアPCM 7.1chやDSD(SACDと同じ1bit)信号ということになります。HDMIやHDCP-Keyのライセンス料は当社で支払いますので、購入された方はHDCPで保護されたコンテンツも問題なく再生できます。Dolby True-HDなどはPlayer内部のデコーダでリニアPCM信号に変換してHDMIに出力すれば、本スプリッタを通して自作のアンプで聴くことができます。

 話が横道にそれましたが、前回の写真の電源の回路は図のような簡単なものです。Cr2_pwu01_3
 結局、いろいろ実験しましたが簡単なものを基本に忠実に作るのが一番結果がよいということになりました。CO2排出削減には反するので量産はどうかと思いますが。

 AC100V電源の入口には3Pインレット、ヒューズ内蔵のラインフィルタを入れておきます。PCや携帯電話などのACアダプタだけでなく、液晶TVなどにもスイッチング電源が使用されており、AC100ラインにはスイッチングノイズが乗ってきますので、それらの侵入を防ぐためにもラインフィルタは必要と思います。スイッチング電源だけでなく、インバータエアコンや扇風機、調光式電気スタンド、古いところではヘアドライヤなどのモータ使用機器など、家庭内にはAC100Vラインや空中にノイズを撒き散らす機器はいっぱい存在します。しかも、これらの機器のほとんどがAC100ラインに直接、並列に接続されていますので、同じ部屋の中でなくとも同じ家(柱上トランスが同じなら近所からも)の中ならどこからでもAC100Vラインに乗ってやって来ます。Audio雑誌などでもこれらのノイズについて、音質に与える影響に関する記事がよく掲載されています。アンプの近くでこれらのノイズを低減させる並列型のノイズフィルタ(Quiet LineやNOISE HARVESTERという商品名)は以前から販売されていますが、今回は直列に挿入するタイプのラインフィルタを使用しました、ただし、このラインフィルタにはそれらの並列型フィルタと同じようにコンデンサが2本のライン間に実装されています。直列にコイルが入りますので高級AC電源ケーブルを使用しても、こんなのを間に入れたら意味がないと言われるかも知れませんが、強力にノイズをカットするためにはこちらの方が確実です。
 それともうひとつ、もし将来または現在既にPLC(高速電力線通信)をご使用中でしたら、ラインフィルタや並列型のノイズフィルタはPLC信号を減衰させてしまうので、PLCを優先するのであれば使用できません。PLCはAC100Vの電力線に高周波信号を乗せていますので、これらのフィルタを使用すると、高周波信号が減衰させられてしまい、機器間で通信できなくなってしまいます。PLC機器自体はAC100Vから信号を分離する回路を内蔵していますが、同じAC100Vラインを使用するAudio機器などはラインフィルタがないとPLC信号の高周波信号はすべて機器内にノイズとして飛び込んできます。PLC機器は昨年10月にやっと日本国内で認可され、EMC規制がありますが、現時点では各機器メーカの開発パワーは既存の機器にノイズとして飛び込ませないことよりも、PLC信号が如何に減衰させられずに家中に届くかということに注がれています。したがって、現時点ではAudio機器側で自衛し、PLC機器は完全に別系統のAC100Vで使用するということが必要と思います。REX-Linkのような無線方式に対して、「これからはPLCがAudio伝送の主流だ」という意見もありますが、現時点ではPLC信号はAudio機器には電源ノイズとなると思います。

 話が横道にそれてばかりでしたが、次回はラインフィルタから先に進みたいと思います。